難問を解くシンプルな思考法:デカルトの「分割の規則」
目の前に立ちはだかる巨大で複雑な問題に直面していませんか?
プロジェクトの遅延、人間関係のもつれ、学習の壁などです。
私たちは、その問題の大きさに圧倒されるかもしれません。
さらに、どこから手をつけていいか分からなくなることがあります。
しかし、解決できないように見えるその問題にも、シンプルなコツがあります。
この記事では、フランスの哲学者デカルトの思考法を解説します。
どんな難問も解決へと導く力があります。
古典の解説:デカルトの「四つの規則」
この思考法は、ルネ・デカルトが提唱した「四つの規則」の一つです。
真理に到達するための論理的な方法論です。
分割の規則:複雑さを打ち破る
「分割の規則」は、デカルトの主著『方法序説』に記されています。(出典:『方法序説』)
これは「四つの規則」の第二法則です。
デカルトは次のように提唱しました。
「私が考察する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも、その解決のために不可欠なだけの、部分に分割すること。」
すなわち、「複雑な問題は、より小さく単純な部分に細かく分けなさい」ということです。
哲学的な意味:パズルの解き方
この規則は、手に負えない問題を分解することを説きます。
そして、ひとつひとつは簡単に解決できる小さな問題にします。
たとえば、巨大なパズルを解くときを考えてください。
全体を一度に完成させようとすると途方に暮れてしまいます。
しかし、まずは「角の部分だけを集める」という小さな作業に分けます。
その結果、全体像が徐々に見えてくるようになります。
デカルトは、このアプローチがあらゆる問題解決に応用できると考えました。
問題を分解することで、見落としが減ります。
したがって、論理的な思考を積み重ねることが可能になります。
歴史的背景:普遍的知識の探求
ルネ・デカルトは、17世紀に生きたフランスの哲学者です。
彼は「近代哲学の父」と呼ばれます。
彼が生きた時代は、科学革命が進行していました。
伝統的な哲学や世界観が揺らいでいたのです。
デカルトは、数学のような確実な土台を持つ知識体系を構築しようとしました。
そのために、彼は思考法の確立が必要だと考えました。
まずすべての前提を一度疑い(明証の規則)、次に問題をシンプルに分解する(分割の規則)という方法を編み出しました。
歴史上の具体的事例:エッフェル塔の建設
この思考法は、巨大なプロジェクトの遂行にも応用されました。
19世紀末のフランスで建設されたエッフェル塔の事例です。
分割された巨大プロジェクト
エッフェル塔は、高さ300メートルを超える巨大な鉄骨建築物でした。
一見すると全体像を把握するのが困難なプロジェクトです。
しかし、建設者のギュスターヴ・エッフェルは、全体を細かく分割しました。(参考文献:ギュスターヴ・エッフェル『エッフェル塔の建設』など)
一つ一つの鉄骨を、工場で事前に製作するという方法をとりました。
個々の鉄骨には、それぞれ番号が振られました。
そして、どこに設置すべきかが明確にされました。
その結果、膨大な量の部品も、現場で組み立てるだけで完成させることが可能になりました。
このように、デカルトの思考法を具現化し、複雑な巨大プロジェクトを効率的に進めることができました。
現代経営への応用:大規模目標の実現
この規則の本質は、「行動へのハードルを下げる」ことです。
経営者・管理者が日々の業務で活用できる応用例を解説します。
1. プロジェクトマネジメント:WBSの活用
大規模なプロジェクトを任された場合に応用できます。
たとえば、「新しいサービスを開発する」という大きな目標があります。
いきなり達成しようとするのではなく、小さなタスクに分解しましょう。
具体的には、WBS(作業分解構造)を作成します。
「市場調査」「機能のリストアップ」「プロトタイプの作成」などです。
したがって、各タスクの担当者が明確になり、進捗管理もしやすくなります。
これにより、プロジェクト全体を円滑に進めることができます。
2. 組織変革:段階的な導入
企業全体の組織文化を変革したいという大きな目標があります。
しかし、一度に全てを変えようとすると、社員の反発や混乱が生じます。
むしろ、変革を小さなステップに分割すべきです。
「まず特定の部署で新しい評価制度を導入する」
そして、「その成功事例を全社に展開する」という段階的な導入を行います。
このため、心理的な抵抗を最小限に抑えつつ、変革を定着させることが可能です。
3. 経営戦略:KGIからKAIへの分解
企業のKGI(重要目標達成指標)は、非常に大きな目標です。
「売上を20%アップさせる」といった目標です。
これをそのまま現場に伝えても、社員は戸惑うかもしれません。
そこで、KGIをKAI(重要行動指標)に分割します。
「顧客との面談数を週に10件増やす」などです。
つまり、日々の行動レベルまでブレイクダウンします。
その結果、社員一人ひとりが何をすべきか明確になり、目標達成に貢献できます。
まとめ:小さな一歩が巨大な壁を乗り越える
デカルトの「分割の規則」は、いかに問題解決のハードルを下げるかを示します。
私たちは、あまりに大きな問題や目標を前にすると、圧倒され、無力感を覚えます。
しかし、この哲学は、どんなに複雑な問題も解決可能だと教えてくれます。
ひとつひとつは解決可能な小さな部分に分解できるのです。
もしあなたが、今、目の前の大きな壁に立ち尽くしているなら、思い出してください。
いきなり全体を解決しようと焦ってはいけません。
まずは問題を小さなタスクに分解し、最初のひとつだけを片付けること。
その小さな一歩が、やがて巨大な壁を乗り越える確かな力となるでしょう。
専門用語の解説
| 専門用語 | 解説 |
| ルネ・デカルト | 17世紀のフランスの哲学者、数学者。「近代哲学の父」と呼ばれる。 |
| 分割の規則 | デカルトの「四つの規則」の第二法則。複雑な問題を小さな単純な部分に分割して解決する方法。 |
| 『方法序説』 | デカルトの主著。真理に到達するための思考法(四つの規則)を記した。 |
| 明証の規則 | デカルトの「四つの規則」の第一法則。疑いようのない真実だけを知識の土台とすること。 |
| WBS(作業分解構造) | Work Breakdown Structureの略。プロジェクト全体を、実行可能な小さなタスクに階層的に分解すること。 |
| KGI(重要目標達成指標) | Key Goal Indicatorの略。組織やプロジェクトの最終的な目標を定量的に示す指標。 |
| KAI(重要行動指標) | Key Action Indicatorの略。KGIを達成するために、日々取るべき具体的な行動を数値化した指標。 |


