張儀の『連衡策』に学ぶ! 強敵を分断し、孤立を避ける戦略的外交術
巨大な敵に立ち向かうための「外交戦略」
巨大な相手との対峙
あなたは、市場で巨大な力を持つ相手と対峙していますか?
一人で真正面から戦っても勝ち目はありません。しかし、 その相手を孤立させることは可能かもしれません。
そして、自分に有利な状況を作り出すことはできるはずです。
古代中国には、まさにその戦略で天下を動かした人物がいました。その人物が、秦(しん)の外交家、張儀(ちょうぎ)です。
彼の有名な戦略が「連衡策(れんこうさく)」です。
古代の外交家から学ぶ思考法
この記事では、戦国時代の外交家、張儀が考案した「連衡策」を解説します。
強い相手に立ち向かうための戦略を学びましょう。孤立を避ける思考法や、敵を分断する思考法を応用します。
そして、 現代のビジネスや人間関係での応用例を紹介します。経営者が複雑な競争環境を乗りこなすためのヒントを得られるでしょう。
古典の解説:「合従」を破る「連衡」の真意
『戦国策』に収められた縦横家の思想
この原文は、縦横家(じゅうおうか)の思想をまとめた『戦国策(せんごくさく)』に収められています。
原文は、強大な秦の力が列国との関係性を決定づけることを示唆しています。
現代語訳(要約):
もし秦が、力を持ち、各国がそれに従えばどうなるでしょうか。列国は互いに親密な関係を築くことができません。秦の支配を受けるでしょう。
「連衡策」と「合従策」
「連衡策」とは、具体的に秦という強国が、他の弱小国と横の連携(=連衡)で個別に同盟を結び、結束を阻止する戦略です。
当時、秦は最も強大な国でした。一方で、 他の六つの国(六国)は、秦に対抗するために動きます。南北に連なる縦の連携(=合従策、がっしょうさく)を組もうとしていました。
この合従策を主導していたのが、もう一人の有名な外交家である蘇秦(そしん)です。
張儀の説得と戦略の成功
しかし、 張儀は秦の利益を最大化するため、「連衡策」を提案しました。彼は六国を一つずつ訪ね、秦と個別に同盟を結ぶよう説得しました。
その際、張儀は「秦と同盟を結べば、安全が保障され、領土も拡大できる」と約束します。
結果として、 六国は互いに不信感を抱くようになり、合従策は崩壊しました。張儀の連衡策は、秦が天下を統一する上で、大きな役割を果たしたのです。
歴史上の事例:ビスマルクの「勢力均衡」外交
プロイセンを孤立から守る巧妙な戦略
張儀の連衡策に似た戦略は、19世紀のヨーロッパにも見られます。
プロイセン(後のドイツ帝国)の宰相であったオットー・フォン・ビスマルクが主導した外交政策です。
当時のドイツは新興国でした。さらに、 フランスやロシア、オーストリアといった強国に囲まれていました。
ビスマルクは、これらの国々が協力してドイツを孤立させるのを防ぐために、巧妙な外交を行います。
強国を懐柔し、他国を分断する
彼は、特定の国と一時的な同盟を結びました。別の国と対立させることで、ヨーロッパ全体の勢力均衡を操作しました。
これにより、ドイツは戦争を回避します。国力を増強することに成功しました。
これは、強国を直接打ち破るのではありません。強国を懐柔し、他国を分断する点で「連衡策」と似ています。すなわち、 複雑な外交関係を巧みに利用し、自国に有利な環境を作り出す戦略です。
現代経営への応用:複雑な関係性の操作
この戦略の本質:関係性の操作
張儀の連衡策は、現代にも通じる普遍的な教訓を持っています。
その本質は「相手を直接打ち破るのではない」という点です。さらに、 「関係性を操作して状況を有利に進める」という思考法です。
私たちは実生活で、この連衡策を無意識に使っていることがあります。
ビジネス:競争環境の再設計
市場を独占している大手企業を相手に、中小企業が連携して立ち向かうのは難しいです。
しかし、 連衡策を応用しましょう。大手企業の競合他社と個別に提携したり、別の業界の企業と手を組みます。これにより、市場での存在感を高め、新たなビジネスチャンスを創出できます。
すなわち、 競争相手が手を組めないよう、自社が中心となって個別の協定を結ぶことが重要です。
経営統合(M&A)とパートナーシップ
企業間のM&Aや大規模な提携交渉を考えてみましょう。
このとき、 競争相手が組む可能性を排除します。自社が中心となって、必要な技術や資本を持つ企業と個別に提携することが極めて重要になります。
連衡策は、市場の孤立を防ぎ、常に優位な立場を確保するための戦略的外交術です。
組織と人間関係への応用
組織内対立の解消
グループ内で自分と対立する人がいるとします。正面から意見をぶつけ合うと、お互いが傷つき、関係が悪化します。
しかし、 他のメンバーと個別に協力関係を築きましょう。共通の友人に間に入ってもらうことで、対立関係を解消し、物事をスムーズに進められるかもしれません。
これは、感情的な対立を避け、冷静に状況を解決する連衡策の応用と言えます。
チームビルディングと主張の浸透
ある集団の中で、あなたが特定の立場を主張したいとします。全員を説得するのは難しいです。
そこで、 あなたの意見に賛同してくれそうな人たちと事前に個別に話し、味方を増やしましょう。最終的に主張が受け入れられる可能性を高められます。
まとめ:複雑な状況を操作する知恵
力を分断し、道を切り開く
張儀の「連衡策」は、単なる古代の外交戦略ではありません。
これは、自分の力を過信せず、相手の力を分断するための思考法です。有利な状況を作り出すための知恵です。
この考え方を活用することで、あなたはどんな困難な状況でも、新しい道を見つけ出すことができるでしょう。
したがって、 経営者は、目の前の敵に集中するだけでなく、周囲の関係性を操作することで、常に優位な立場を確保できます。
専門用語解説
| 用語 | 読み方 | 意味 |
| 連衡策 | れんこうさく | 中国戦国時代の外交戦略。強国(秦)が弱小国と個別に横の同盟(連衡)を結び、他の国々の結束(合従)を阻止する策。 |
| 張儀 | ちょうぎ | 中国戦国時代の秦の外交家。「連衡策」を主導し、秦の天下統一に貢献した。 |
| 合従策 | がっしょうさく | 中国戦国時代の外交戦略。弱小国(六国)が南北に縦の同盟(合従)を結び、強国(秦)に対抗しようとする策。蘇秦が主導した。 |
| 縦横家 | じゅうおうか | 中国戦国時代に活躍した、外交術や謀略を専門とする思想家、弁論家たちの総称。 |
| 『戦国策』 | せんごくさく | 中国戦国時代の各国の謀略や策を記録した史書。張儀の言動も多数収められている。 |
| オットー・フォン・ビスマルク | オットー・フォン・ビスマルク | 19世紀のプロイセン(後のドイツ帝国)の宰相。巧妙な外交戦略により、ドイツ統一とヨーロッパの勢力均衡維持に貢献した。 |
| 勢力均衡 | せいりょくきんこう | 国際政治において、特定の国が突出した強国とならないよう、複数の国が同盟などを結んで対抗し、力のバランスを保つこと。 |


